2020年のITキーワード『DX』で組織やサービスを向上
今月は2020年のITキーワードとなる「DX(デジタルトランスフォーメーション)」ついてご紹介します。
DX(デジタルトランスフォーメーション)
IT専門調査会社のIDC Japan株式会社が発表した、2020年の国内IT市場において鍵となる技術や市場トレンドなど主要10項目において、『DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展』が一つ目にあげられています。「2020年の国内ICT市場は、前年比1.3%減となるが、DXに向けた支出は着実に増加する。」とされています。
DXとは何か?
2004年、スウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が提唱した、「われわれ人間の生活に何らかの影響を与え、進化し続けるテクノロジーであり、その結果、人々の生活をより良い方向に変化させる」という概念です。
言葉を直訳すると「デジタルに変換する」という意味合いになりますが、単純にデジタル化するだけではDXとは言えません。
DXには大きく5つのステップがあります。
- デジタル化
デジタルテクノロジーを導入することです。様々なツールをデジタルに置き換えることでデータを蓄積していくことが可能になります。 - 効率化
蓄積したデータを部門ごとに活用し効率化していくステップになります。 - 共通化
蓄積したデータを他部門でも応用できるような基盤を作る作業になります。 - 組織化
構築した基盤をより効率的な運用を目指すステップになります。業務を明確化し、データに基づいた戦略意思決定が行われるようになります。 - 最適化
データを中心にした経営戦略(データドリブンな戦略)が行われるようになります。これまでに蓄積したデータなどのデジタル資産を活用し、事業全体に大きなイノベーションを起こしていくステップです。
経済産業省の「DX推進ガイドライン」では、以下のように定義されています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
※参考:https://orenocloud.tokyo/cloudinfo/trend/DigitalTransFormation.html
※参考:https://bizhint.jp/keyword/214812
DX事例紹介
ローソンの次世代店舗(最新技術を駆使した最新のDX事例)

ローソンは日本Microsoftと共同でモデルとなる次世代店舗を開発し、新しいサービスの提供する為、日本Microsoftの本社がある品川に「ローソンイノベーションラボ」という名の研究施設を作りました。この施設を「次世代店舗」のモデルとし、ここで実証実験されたサービスが他店舗に展開されていきます。
次世代店舗ではこれまでお客様の利便性が大きく変わるいくつかの仕組みがあります。
LINEで友達になるとお店の最新情報が送られてくる「ローソンクルーあきこちゃん」。おすすめの新商品の情報や割引クーポン、占いやゲームで遊ぶことも可能です。更に、外出すれば、最寄りの店舗を教えてくれます。 そして実際にお店に行くと、入店のタイミングで、そのお店のどこにおすすめ商品があるか教えてくれます。
店内を歩いて回ると、配置されたデジタルサイネージの表示が状況に合わせて変化する「インテリジェントシェルフ」。サイネージから離れているとキャンペーンの告知などが表示されていますが、近くで商品を取るとカメラが認識、その商品の詳しい情報に表示が変わるという仕掛けです。
会計処理はキャッシュレス対応はもちろんのこと、商品の袋詰め作業もロボットにより自動化され、会計の待ち時間が大きく減少します。更に行動・購買履歴が記録され、お店に行けば行くほど、より自分に合った情報サービスを受けることができます。
※参考:https://www.digital-transformation-real.com/blog/lawson-dx-casestudy.html
グンゼのデータ蓄積の取り組み(肌着で生体情報を取得しデータ活用)

肌着の老舗グンゼ株式会社は、着用するだけで生体情報を計測可能なウェアラブルシステムを活用した健康サービス事業を展開しています。人の動きや生体情報を取得できる「導電性ニット」が開発され、動きをセンサーで測定することで猫背率や歩数、消費カロリーなどをチェックできるようになっています。計測には、NECの薄型デバイスが活用されています。肌着の老舗らしく、自然な着用感にこだわりつつ普段の生活の中でできる健康への取り組みとなるDXの例となっております。
※出典:https://www.gunze.co.jp/technology/about/pdf/gunze_wearable01.pdf
三陽商会のDX施策(人とデジタルの連携を重視)
アパレル業界は昨今、店舗にドアマンがいるような高価な“ラグジュアリー”と、ZARAや無印良品、ユニクロといった“低価格路線”のブランドの状況は悪くなく消費者の嗜好が二極化している傾向にあります。また、メルカリ等のCtoCのフリマアプリ等の新しいチャネルも増えてきています。
主に中間価格帯のブランドを展開している三陽商会では、状況の改善に向けてDXに力を入れています。
たとえば、店頭販売の業務領域では、店舗内動線解析と顔認識による顧客管理技術を持つABEJAと連携。ABEJAはカメラを設置するだけで、来店数のカウント・年齢性別推定・立ち寄り分析(導線や滞在時間の分析)等のデータを蓄積することができます。接客率(スタッフが対応した来客数の比率)や離脱率(購入せずに店を出る来客数の比率)、買上率を測定したところ、接客率と買上率の間に高い相関関係が確認されました。そこで、来客数に対してスタッフ数が少なく接客率が低かった船橋店でスタッフを増員したところ接客率も買上率も倍近く向上し、結果として売上が大きく改善したといいます。このようにデジタル強化で得たデータをヒントにしてスタッフが改善策を考案する「人とデジタルの連携」を重視しているのが、三陽商会の掲げる「デジタルトランスフォーメーション」の特徴となっています。