「OMO」の考え方がトレンドに!オンライン/オフラインの境をなくす
最近小売店の考え方のトレンドとなっている「OMO」について説明、O2Oとの違い、各国での事例についてご紹介します。
O2Oから「OMO」の考え方へ
オンラインとオフラインの境をなくす考え方
OMOはOnline Merges with Offlineを略した言葉で、直訳すると「オンラインをオフラインと融合する」という意味になります。
顧客がチャネルの違いを意識せずにサービスを受けられるよう、オンライン・オフラインを分けずに一緒のものとして、マーケティング戦略を構築していく考え方を表した用語です。具体例としては、スマートフォンなどモバイル端末でいつ・どこでも利用可能なデリバリーサービスや、DX(デジタルトランスフォーメーション)を活用したサービスなどが含まれます。
コロナ禍により日本でもスタンダードな取り組みに
実店舗に代表されるオフラインとネットショップなどのオンラインは、従来別個のものとしてそれぞれ発展してきました。ですが近年、デジタルや情報技術の発展、人々のライフスタイルの変容により、その境目は徐々になくなりつつあります。さらに現在はビジネスでも私生活でもあらゆるものをデータとして、オンライン上でやり取りをするアフターデジタルの時代です。そのためオンラインをベースとし、ネット内外のサービスを一貫して考えるOMOこそ、これからのスタンダードとなると考えられています。
また、2020年の新型コロナウイルス大流行はそれまで未到達であった分野にもデジタル化の波を到来させ、結果、OMOの考え方に拍車をかけることとなりました。日本でも注目され始めた取り組みですが、アメリカや中国などでは日本より少し前から取り組まれています。
※参考:https://www.makeshop.jp/main/know-how/knowledge/omo.html
※参考:https://www.arts-crafts.co.jp/post-1475/
事例紹介
事例1.アメリカ「Amazon」(購買体験の提供とデータの活用を両立)
Amazon.comが運営する食料品店「Amazon GO」。世界的ECサイトのAmazonが、リアル店舗の運営を開始したことで大きな注目を浴びましたが、その理由の一つには「無人レジ」の導入があります。普段買い物をするとき、商品の購入には「レジに並ぶ・スタッフに商品を渡す・支払う」といった会計作業をします。しかしAmazon GOではこの「会計作業」自体をなくしました。出入り口にあるゲートを通るだけで、自動的に会計が行われます。レジに並ぶ必要がなく、支払いもスムーズで、まさにストレスフリーな購買体験といえます。この無人会計は「ウォークスルー型」と呼ばれ、事前にインストールするAmazon GOアプリ、店内に設置された複数台のカメラ・マイクなどのデジタル技術の活用で実現しています。
Amazon GOの副社長ジアンナ・プエリーニ氏は「Amazon Goの目的は、人件費を浮かすためではない」と語っています。Amazon GOの本質は、最適な購買体験の提供にありますが、その陰にはOMOの実現と同じように、データの活用があります。店内のカメラは消費者の行動を常に捉え分析、事前にインストールされたアプリからは顧客情報、購入履歴も把握できるでしょう。これら集約されたデータを用いて、消費者に有益な情報を届けたり、店内レイアウトを最適化するなどの取り組みが可能になります。
事例2.中国「コーヒーチェーン」(事前注文アプリで行列を回避)
創業から約1年で、中国全土に2000店舗を展開したコーヒーチェーン「Luckin Coffee」。2019年5月には、米国ナスダック市場に上場しました。コーヒー文化がまだ十分に浸透していない中国では、コーヒーは比較的高い飲料となっています。また、行列に並ぶことを嫌う中国人にとって、高い値段を払ってまでレジに並び飲むコーヒーは、購入体験の悪い印象がありました。そこでLuckin Coffeeが提供したのが、「レジに並ばず低コストで購入できるコーヒー」です。
Luckin Coffeeでの注文は、専用アプリを用いた事前注文となります。消費者はレジに並ばずに、店内に行くだけで待つことなく商品を受け取れます。事前注文によって注文数が予測できるため作業効率が上がり、店舗運営のコストを抑えた低価格のコーヒーを提供できます。また同社では店内でくつろげる従来のカフェに加え、ピックアップ専用店、デリバリーが可能な店舗の3種類を用意しています。アプリを用いた事前注文(オンライン)と、消費者のニーズに合わせたリアル店舗の展開(オフライン)によって、良質な購買体験を提供しています。
事例3.日本「アパレルチェーン」(ハウスカードとオンラインストアの会員情報を統合)
12のブランドを保有するアパレル企業「BEAMS」では、店舗で商品を購入した際に発行されるハウスカードの会員データとオンラインストアで登録する会員データの統合を行いました。以前は、実店舗で登録しているハウスカードの会員データとオンラインストアの会員データが別々に管理されていました。このデータの統合を行うことで、消費者がどのような商品をどこで購入したのか個人単位で全て把握可能になりました。
この情報を元に、購入した商品を用いたスタイリング画像などを提案するといった、パーソナライズされた形のアクションを実行しています。また、ビームス公式サイトでは、店舗スタッフが、スタイリングやフォトログ、ブログ、動画といったコンテンツで情報を発信しています。