ダイナミックプライシングと小売業の取り組み事例を紹介
今回は「小売業のダイナミックプライシング」についてと各企業の取り組みをご紹介します
最近注目の小売業でのダイナミックプライシングとは?
ダイナミックプライシングとは

ホテルや飛行機から、アミューズメントパーク、家電量販店まで。需要に応じて価格を変える「ダイナミックプライシング」があらゆる分野に広がっています。
ダイナミックプライシングとは、値付け方法の一種で、商品やサービスの価格を需要と供給に応じて変化させることを指し、価格の変動により、収益を最大化させることを目的とします。
従来、値付けは顧客にとっての価値や市場における競合商品の価格との関係性などさまざまな要素を交えながら人間が行ってきました。それに対して、ダイナミックプライシングは「ダイナミック」という言葉が「動的」を意味するように、商品やサービスの需要に応じて価格を変動させるところに特徴があります。需要がピークのときに価格を上げ、需要が低下したときに値下げすることで、利益を最大化できます。また、ダイナミックプライシングは、値付けの自動化という意味合いも含んでいます。
<出典:https://solution.toppan.co.jp/lifesensing/contents/nomachiDP_contents03.html>
ダイナミックプライシングの仕組み
ダイナミックプライシングは、ルールベース型とAI型の2種類があります。
ルールベース型は、一年を通じた時期ごとの需要の高低や、その他の特別なイベント開催、経験と知見、競合他社の価格などを、人が完全に手動でルールを作成してシステムに登録し、値付けの自動化を図る方法です。
AI型は、あらかじめ過去の販売価格、販売数、競合価格、最安値価格などのデータをAIが学習し、それを元にAIが需要予測を行いながら、その時期に最適な値付けを行う方法です。
ルールベース型は人がルールを設定するのに対し、AI型は人が定めたルールではなく、あらゆるデータを元にAIが推測して値付けを行うという点に違いがあります。現在はAI型のダイナミックプライシングが主流となっています。
<出典:https://solution.toppan.co.jp/lifesensing/contents/nomachiDP_contents03.html>
ダイナミックプライシングにおけるAI活用のメリット
ダイナミックプライシングにAIを活用することで、従来懸念されていた導入障壁を解決できます。AIの普及に合わせて、ダイナミックプライシング導入が加速すると考えられます。
- 従業員の業務負荷の大幅削減
- リアルタイムの価格調整
- 勘や経験に頼らない客観的な結果
- ノウハウやリソース不足でも利用可能
- 回数を重ねるたびに精度向上
- 競争力の向上
- 大規模な価格戦略
- プロモーションと割引の最適化
- マーケットトレンドの把握
- 行動パターンや購買履歴分析による顧客パーソナライゼーション
<出典:https://solution.toppan.co.jp/lifesensing/contents/nomachiDP_contents03.html>
ダイナミックプライシングが定着している業界
- テーマパーク/プロスポーツ観戦 (TDL、USJやプロ野球球団など)
曜日や季節、天候をはじめ、対戦相手や開催アトラクションにより、予約が大幅に変動するため、需要に合わせて価格を自動調整。閑散期の予約拡大により、従業員雇用を安定化。 - ホテル/旅館 (観光旅館、リゾート、ビジネスホテルなど)
インバウンド繁忙期や季節や曜日により、予約が大幅に変動するため、需要に合わせて価格を自動調整、利益最大化。 - 航空機 (JAL、ANAなど)
曜日や季節に加え、時間帯によっても予約が大幅に変動。更に、フライトを変更できる/できないの選択で、割引を設定。便ごとの搭乗者の平準化を実現。 - ECサイト(Amazon、楽天など)
競合他社との価格競争、在庫量、アクセス数などに基づき価格を自動変更。サイト離脱を極小化。
<画像出典:https://navi.funda.jp/article/dynamic-pricing>
小売各企業の取り組み事例をご紹介
価格調整工数減で顧客接点拡大/株式会社ビックカメラ様

Amazonや他EC小売店といった競合が数多く存在する中、ビックカメラにとって価格調整は重要な取り組みです。ダイナミックプライシングの導入に踏み切るべく、価格変更が行われるたびに人力で値札を取り替えるようにしていた値札を「電子棚札」に切り替えました。この電子棚札により、価格変更が一括で行えるようになります。これまで価格変更に費やしていたリソースを、本来大切であった接客業務に割り当てられるようになり、商品を購入せずに帰ってしまうお客様を減らすことに成功しました。
<出典:https://www.brainpad.co.jp/doors/contents/about_dynamic_pricing/>
コンビニ弁当、お惣菜の廃棄ロス低減/株式会社ローソン様

株式会社ローソンでは、電子タグ(RFID)を活用した実証実験を「ローソンゲートシティ大崎アトリウム店」で実施しています。この実証実験は、商品に付いている電子タグから賞味期限が迫っている商品の特定を行い、電子型のプライスカードに新たな価格を反映させるという取り組みです。実験用のLINEアカウントでも商品の情報が通知される仕組みになっており、対象商品を購入した場合にはLINEポイントの還元が行われるといいます。
<出典:https://solution.toppan.co.jp/lifesensing/contents/nomachiDP_contents03.html>
ダイナミックプライシングで余剰在庫削減/株式会社ディノス・セシール様

カタログ通販企業である株式会社ディノス・セシールは、取扱商品の7割を衣料品が占めており、以前から価格変更を実施していましたが、それでも残ってしまう余剰在庫をいかに減らすかと言うのが長年の課題となっていました。そこで、ダイナミックプライシングの実用化に向けた取り組みを、開始しました。商品ページの訪問者数予測モデルの開発などのデータ環境を整えた結果、売り上げ改善効果がみられているようです。
<出典:https://www.trans.co.jp/column/knowledge/dynamic_pricing/>
まとめ
今回は、最近小売業でも注目され始めた「ダイナミックプライシング」をご紹介しました。小売業にとっては、値引き対応の懸念がある「ダイナミックプライシング」もITCやAIの進化によって、顧客の購買データに基づいて、従業員の工数を増加せずに売上の最大化を実現できるだけでなく、食品ロスや余剰在庫の低減、従業員や設備などのリソース有効活用、顧客満足度向上などにより、顧客とのWin-Winを構築できる可能性を持っています。ご興味をお持ちの内容についての詳細は、各サイトをご確認き、小売店の事業価値向上の参考にして頂けますと幸いです。