小売業の課題に対応した新たなトレンドと各企業の取り組み事例を紹介
今回は、小売業の課題に対応した新たなトレンドについてと各企業の取り組みをご紹介します。
小売業が直面している課題
近年の小売業は業界全体として売り上げが停滞している傾向にあります。理由は以下の3点です。
1.購買意欲の低下
2022年以降は原材料や燃料が高騰し、物価が上昇しています。
一方で、2022年の1世帯あたりの平均所得は524万2千円であり、給与所得は2013年と同等状況で、10年間変化していません。
これらの結果から、消費者がお金を使う意識が低下し、商品が売れにくい現状が生まれているのです。
2.人手不足の深刻化
小売業では、慢性的な人手不足が続いています。実店舗の場合は営業時間が長く、土日も出勤する必要があることも多いため、求人への応募が来にくいのが原因です。
2023年厚生労働省調査でも、小売業の就業者数は2021年よりも28万人減少しています。
3.消費者行動の変化
コロナ禍をきっかけに、それまで実店舗で購入していた品物もECサイトで購入する消費者が増えてきました。現在では食料品をはじめとする日用品もECサイトで購入する人も少なくありません。
そのため、実店舗でしか展開していない小売業は、ECサイトとの両立が課題となります。
また、消費者庁委託の調査会社インテージリサーチが2020年2月、2803人を対象に実施した調査によれば、エシカルな行動の日常的な実践者は36.1%、エシカル消費につながる商品・サービス購入の意向がある人は81.2%、購入経験者は39.7%という結果でした。
小売業の新たなトレンド
IT技術の進歩に伴い、消費者行動の変化に合わせて、国内外の小売業を含む様々な業種で、日々新たなトレンドが生まれています。
1.オンラインとオフラインの融合
オンラインとオフラインの融合は、消費者は商品をオンラインで注文し、店舗で受け取るといった方法を好む傾向にあり、これは「BOPIS(Buy Online, Pick-up In Store)」と呼ばれています。
この方法は、便利さと効率性を提供し、顧客満足度を高めることができます。
2.パーソナライズされた顧客体験
お客様一人ひとりに寄り添ったカスタマーサービスを提供し、顧客満足度やロイヤルティ、商品やサービスの価値を高めることで、リピーター顧客を増加させます。
また、昨今の店舗データ計測ツールの普及により、店舗における顧客の購買行動を数値化し、接客分析や戦略構築などがしやすくなりました。
3.持続可能なビジネスモデルへのシフト
エシカルな消費がトレンドとなる中、環境に配慮した製品やブランド展開など、持続可能性を追求していくことで、企業への信頼度や評判が向上し、顧客の支持を集めやすくなる傾向があります。
4.利便性の追求
最近では、アプリを使った会計システムで自動決済を行うサービスや、コンビニエンスストアの無人決済店舗、さらに、商品を持って入口のゲートを抜けると自動的に決済が完了する、「レジなし」スーパーが開店するなど、利便さを追及する動きが増えました。行列や混雑を避け、ストレスフリーな顧客体験が満足度の向上につながるだけでなく、レジスタッフの人件費削減や、店舗で得た顧客データを次のマーケティング戦略に活用できるなど、企業側の視点からも注目されています。
各企業の取り組み事例をご紹介
BOPIS(Buy Online Pick-up In Store)を導入して、オンラインとオフラインを融合
株式会社ワークマン 様では、BOPISを導入して、まず店舗受取サービスを客注通販と店舗取置通販としてサービスを刷新し提供を開始しました。オンライン注文で自宅への配送は購入額が1万円以上でなければ送料が発生してしまいます。この負担を嫌う購入者によって積極的に活用され、オンラインストアでは65%のお客様が店舗での受け取りサービスを選択し、年間12万人以上がオンラインストア注文品の購入のために店舗へ来店していました。
注文から最短3時間、出勤前の朝7時から夜8時まで受け取り可能。また、店舗スタッフは管理画面を活用し、店舗ピッキング、受渡し対応を行うことが可能となりました。これらにより、新しいお客様の動線を確保したというところでさらに事業を伸ばしています。2022年から5年以内にECでの宅配を全廃し、オンラインからの購入は店舗受け取りのみに絞ると発表しています。
人流解析ソリューションにより店舗来店分析を精緻化
丸善ジュンク堂様ではPOSデータや入店人数だけでは、買わなかった人の動きを捉えることができず、店舗改善が良好ジャンル・顧客を絞り込む方向に傾きがちでした。
そこで人流解析ソリューション「Label Note」の導入にて、AIカメラを店内に設置し、各エリアの通過人数や滞留状況を把握。
それにより、入店~購入までの一連のファネルを可視化することができ、どこにボトルネックがあるのかを定量的に可視化し、改善施策の精度向上に繋げました。
出典:画像:株式会社インテージテクノスフィア導入事例
まとめ
小売業では、購買意欲の低下や、人手不足、消費者行動変化によって、従来のままでは成長することが厳しくなっています。
しかし、小売業は、「モノが売れにくくなった」のであって、「モノが売れなくなった」わけではありません。新たなトレンドにより、これを打破し、成長を遂げている企業は、大手に限らず中小でも存在しています。
消費者の行動変化やニーズに対応することによって、まだまだ成長させることは可能です。
上記の様な取り組みで、顧客接点の拡大、来客にマッチした品揃えなどによる売上成長を見込むだけでなく、レイアウトやスタッフ配置の改善により、人手不足を乗り越えたりすることにチャレンジしてみては如何でしょうか。