小売業の脱炭素経営とは:カーボンニュートラルに向けたIT活用と各企業の取り組み事例を紹介
今回は「小売業の脱炭素経営」についてと各企業の取り組みをご紹介します。
最近注目の小売業での脱炭素経営とは?
カーボンニュートラルとは

カーボンニュートラルとは「二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させること」です。国際的にSDGsに向けた動きも加速しており、その一環として脱炭素に向けた動きも活発化しています。
国内でも関心は高まっており、2020年10月、政府は2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロ(カーボンニュートラル)にすることを宣言しました。
画像出典:https://asuene.com/media/1366
小売業におけるCO2排出量の現状

2021年度における日本の小売業におけるCO2排出量は、電気・熱配分後排出量から見たエネルギー起源CO2排出量を部門別に分けた結果、小売業が含まれる「業務その他部門」のうち22%(4210万トン)を卸売・小売業が占めています。
これは「業務その他部門」の中で、CO2排出量がいちばん多いという状況です。中小企業庁の情報によると、小売業では段階0+1で71.5%で取り組みが進んでいない状況です。
出典:https://asuene.com/media/1366 、画像:https://www.env.go.jp/content/000166771.pdf
脱炭素経営とは
脱炭素経営とは、企業が事業を行う上で排出する温室効果ガスを削減し、究極的にはゼロにする ことを目指して経営方針に取り入れることを指します。脱炭素経営を実現するためには、再エネの利用拡大、省エネの取り組み、サプライチェーン全体でのCO2排出量の管理・削減などが必要です。脱炭素経営は、自社のエネルギー戦略に留まらず、業界や市場、ステークホルダーからの要請に応えて信頼を獲得する意味でも、多くの企業にとって重要な戦略の一つとなっています。大手企業はサプライチェーン全体で脱炭素の施策に取り組むケースが多いため、その取引先として選ばれるには同様の温度感で脱炭素施策に取り組む姿勢が求められるでしょう。
出典:https://www.eneres.jp/journal/decarbonization_for_smes/
カーボンニュートラルへの取り組みによる企業メリット
カーボンニュートラルへの取組みは、脱炭素経営を通じて企業経営の健全性を向上させるだけでなく、様々なメリットをもたらします。
- (1)企業のイメージが向上する
脱炭素経営に取り組むことにより、企業は環境への配慮が評価され、国内外からのイメージが大きく向上します。 - (2)光熱費や燃料費を削減できる
脱炭素経営により、企業はCO2排出量を削減し、光熱費や燃料費の大幅な削減が可能になり、長期的なコスト削減に繋がります。 - (3)知名度・認知度が向上する
脱炭素経営を積極的に行う企業は、その事例がメディアに取り上げられたり、PR活動を通じて知名度が高まることがあります。 - (4)社員のモチベーションが向上する
日本総合研究所の調査によると、環境を考慮した職場は社員の意欲を高めることが示されています。 - (5)人材獲得力が向上する
特に若年層の間では、環境に配慮する企業への就業意欲が半数以上に高いことが明らかになっています。 - (6)好条件で資金調達できる
株式市場では、脱炭素経営への評価が高まり、株価の安定性にも有利な影響を与えています。また、政府による補助金などの支援策が設けられていることから、経済的なメリットがあります。
出典:https://proactive.jp/resources/columns/it_for_achieving_carbon_neutrality/
カーボンニュートラル達成に向けた企業のIT活用
経済産業省が公表した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」(2020年12月)においては「カーボンニュートラルの実現には様々な用途においてデジタルトランスフォーメーションが必要である」と明言されています。
また、省エネ法が改定され、新たに非化石エネルギーを含めたエネルギー使用の合理化および非化石エネルギーへの転換が求められるようになりました。「業務その他部門」においてのエネルギー消費量は卸売・小売業が最も多くなっており、カーボンニュートラル実現のためには省エネ法の対象とならない企業においても対応が必要となります。
出典:https://asuene.com/media/1366/
画像:https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/enterprise/overview/amendment/index.html
各企業の取り組み事例をご紹介
AI需要予測による自動発注システム|株式会社ライフコーポレーション様
首都圏および近畿圏でスーパー「ライフ」を運営する同社は、BIPROGY株式会社(旧日本ユニシス株式会社)と共同開発したAI需要予測による自動発注システムを導入し、全店舗にて稼動しています。販売実績や気象情報、販売計画などの各種データをもとに商品発注数を自動で算出。これまでもドライグロサリー(冷蔵を要さない食品)を対象とする自動発注システムは導入していましたが、販売期間が短く制度面での対応が困難だった牛乳などの日用品にも用いています。作業負荷や難易度が高い業務を自動化することで、従業員の作業負担軽減や、商品欠品・廃棄ロスの削減を実現しています。
出典:https://business.ntt-east.co.jp/bizdrive/column/dr00121-011.html
CO2排出量削減等の環境に配慮した配車|日本ロジテム株式会社様

日本ロジテム株式会社グループ様では、少子高齢化や人口減少などによる事業環境の変化に対応するため、物流DXを推進。その一環として、配車業務プロセスの最適化に取り組むためにハコベル株式会社の「ハコベル配車計画」導入を決定した。輸送モード、チャータールートの最適計算をAIアルゴリズムで算出し、配送コストの最小化や配送計画業務の標準化と高速化を実現します。AIによる配車計画システムによって、配車業務の可視化ならびに自動化を図り、その結果、配車担当者の暗黙知によって行われていた配車業務の可視化が進み、業務改善・効率化および標準化が進みました。今後は「ハコベル配車管理」のデータを活用することで、CO2排出量削減等の環境に配慮した配車が可能となることを期待している。
出典:https://corp.raksul.com/news/press/230606_hacobell_distribution_plan/
株式会社おぎそ様/学校給食食器のリサイクル食器事業を考案

株式会社おぎそは、食器中にAL2O3(アルミナ)を30%含有させた、丈夫なリサイクル高強度磁器食器の販売元です。また、全国の学校給食市場で廃棄されている食器の欠けを自主回収し、原料として再利用するリサイクル食器事業を考案し事業化、首都圏を中心に食器を納品し市場展開してきました。(広域認定取得)平成28年には、全国栄養士各位からの声を受け、廃PETボトルでリサイクルPET樹脂食器を事業化しています。
さらに令和4年から「小売店事業(関東・中部・関西で9店舗)」に参入し、店頭でおぎそ製リサイクル食器を紹介するほか、消費者に食器の再生利用を勧めています。
出典/画像:https://www.env.go.jp/content/000114657.pdf
まとめ
今回は、地球温暖化が進み、世界で環境被害が増加している中で、2050年をゴールに小売業の脱炭素経営が求められる状況などをご紹介しました。小売業のカーボンニュートラルへの取組に、どんなメリットがあるのか?その実現にはITを活用したDX化が必須であることをご紹介しました。また、事業の中でのCO2排出量の見える化を実現するために、事業活動のどこに着目したらよいのか?DX化により、どのように取り組んでいるのかなどをご紹介しました。ご興味をお持ちの領域についての詳細は、各サイトをご確認き、小売店の事業価値向上の参考にして頂けますと幸いです。